Jimdo作品提供について
司会
いつも普段ってお二人ともウェブから遠いじゃないですか。あんまり今回そういうイメージはなかったと思うんですけど、実際描いてみて何か意識された事はありますか?
TOMOYAARTS(以下TOMO)
やっぱり季節感とか。季節ごとに着せ替えできるように、春っぽい花を入れてみたとか、色味をちょっと変えたりとかありましたね。
司会
普段、TOMOYAさんはデスクトップの壁紙とかを手がけているので、、比較的インターネットを意識しているのかなと。
TOMO
(ヘッダー枠に)はまる絵というか、ちょっと横長な絵という括りはありましたね。でも、そういう絵も最近乱雑に描いていたりしていたので。その感覚をそのまま使ったというか、季節感を考えて、それを枠に描いたっていう感じです。
司会
かおさんはどうでした?
かおかおパンダ(以下かお)
わたしは、もっと何も意識してないかも。
TOMO
かおちゃんの絵、まだ見ていないんだよね。
かお
ともちゃんの絵も見てない。あ、1枚だけ見たかな?
司会
そうですね、思っていたよりも強烈な色の絵を頂きましたね。
かお
やっぱり、変えてくっていう所で、そこまで私は季節を考えてたわけでは無いんですけど、色々なものの中から選べるような方がいいかなと思いました。
司会
お二人色の使い方が対照的だったと感じました。まだお二人は見ていないと思いますけど。
かお
お互いに使う色は違うね。
司会
ブライトな感じと、落ち着いた感じで、主催者側としてはありがたかった。
かお
つなぎについてる色が違うからね。私の場合はショッキングピンクとか。
TOMO
どっちかというと僕の方が、日に焼けた色というか、ちょっと黄色味がかった色味が多くて。
かお
ともちゃんは、ちゃんと色を混ぜて作るけど、私はほとんど混ぜないんですよ。
画面上で、乗せてって重ねていく。例えば、「これとこれ混ぜて、もうちょっと白っぽくしよう」とかあまりやんないんですよ。
司会
じゃあそのままズバっといっちゃうんですね。
かお
そのままですね。ほぼ。混ぜれば混ぜるほど、彩度が落ちちゃうし、私はできるだけ発色いいのが好きだから。
TOMO
最近は僕もそんな描き方してる。画面上で混ぜて油絵的な感じかな。
パレットで色を作るんじゃなくて、何個も色を乗っけて、暗い色を出したかったらいっぱい重ねて、明るい色を残したいなら、そこはあまり手を加えないとか。
ウェブを通じて
司会
お二人とも、ホームページを作る前と後って変わりました?
かお
すっごい変わりましたよ。
司会
それは、いままで見てこなかった人からの反応が来るようになったという事ですか?
かお
例えば、新しく出会った時に、名刺があるのと無いので全然違うし、さらに名刺の中にアドレスがあれば、また(ホームページへ)来てくれてもう一回つながる。
やっぱり、一回だけ会っただけだと、そんなにつながらなかったりすることが、アドレスがあるだけでまた来てくれるし。
そのときは絵を持っていなかったけど(ホームページで)見てもらえますね。
司会
きっかけが無かった場合は(ホームページを)作っていたと思いますか?
TOMO
多分ポートフォリオ持ち歩くしかないね。
かお
ないね。私の場合は大学時代の友達が立ち上げたウェブの会社で作ってもらってる。じゃないとできない。
司会
そういう、周囲にウェブ制作の環境が無いアーティストはどうされていると思いますか?
かお
今でも持ってない人は持っていないね。
TOMO
最近はブログである程度自分の作品をUPできるから、そういう展開が多いんじゃないですかね。お医者さん選びもそうですが、今の時代、選ぶ方から見ると、ウェブがある無しは、かなりポイントになると思います。
口コミなどの評判がわかるし、お医者さんの顔も見えてくる。
それはやっぱりイラストレーターにも当てはまると思います。
作品集など持っていなくて、名刺しか渡せなかった状況でも、ホームページがあれば、ゆっくり自分を知ってもらえる。
ユーザーの変化に対して
司会
今ほんとに本屋がつぶれているとか、色んな人が色んなデジタルグッズを持っていて、ユーザーがどんどん見るものが変化していますが、今後自分に影響しそうだなって考えたことはありますか?
TOMO
僕もネットでよく本を買っています。
でも、なんだか、人を介さないで買うのってなんだか味気ないと感じる事があります。
かお
最近悩んでるのがETCをつけるかつけないかで。あれ便利だけど、私はけっこうお金を渡しておじさんに「こんにちはー」とか言ったり、地方に行くとそこでもう訛りがわかったりとかするのが面白いのになと思っていて。でも、高速安くなるから、今悩んでいるんです。
司会
便利とコミュニケーションの狭間ですね。
かお
画集もね。CD-Rのデータで出している人もいるよね。
TOMO
(画集の)見積もり出してもらった人の中で、一社だけ、ウェブの画集を出しませんかという所があって。
あれって紙とか印刷の匂いが無いというか、やっぱりそれを考えると本というものは無くならないと思うんですよね。
一時期電子ブックとかありましたけど、やっぱり紙の装丁といか、印刷物の方が、いいなーって僕は思って。
かお
やっぱり、直に手でふれられるものでありたいね。
司会
役割分担はされていくでしょうね。そうはいっても、例えばフランスの田舎の人がお二人の絵に気づくには、やっぱり物質的なものだと時間がかかってしまう。
そういう役割として、インターネットはきっかけ的なものとして、良いと思いますね。
かお
確かに、伝わる速さが全然違うね。
司会
時間を選ばないし、見たいときに見ることができる。そこが上手く分かれていくと良いんでしょうね。
確かに人によってはウェブでもいいっていう人もいるかもしれませんが、やはり紙は紙で。
TOMO
デジタルのRGBと印刷のCMYKでは、やはり色見が違いますよね。
じっくり刷り直しなど重ねて色見を調節出来る印刷に比べデジタルは難しい部分があります。
ただ、手軽にいつでも絵を発表出来る点はインターネットが有利ですよね。
そしてそれをきっかけに、個展へ足を運んでもらえる。
かお
本物見れば絶対こっちの方がいいってわかるしね。
TOMO
筆の跡がちゃんと見えるとか、やっぱりちゃんと違っていて、ただの筆の跡じゃなくて、気持ちとかが入っているので、伝わってくるものは違うと思うんですよね。
表面的なものはインターネットとか電子的なものでわかるんですけど、個展にくれば本人と話をする事もできるし、実際にどんな人が描いているかって一番重要だと思います。作品と作者の一致というか。
そういうためにもインターネットはすごく良いきっかけになると思います。
司会
地方は、アートに触れる機会が少なくて、やはり東京との情報量の差というか、やっぱり文化の格差があるし、そういう意味でインターネットが普及していけばいくほど、格差が無くなるというか、少なくともきっかけだけは減るのかなとは、インターネット屋として望んでいます。
もちろん、最後に物を買うとして、ただその前の段階は、少なくとも地方の人にも幸福感を与えて欲しい。と思い、そのためにはアーティストの方々が一人でも多くホームページを持ってくれれば、少なくとも皆が触れる機会は増えるわけじゃないですか。
今回、このコンペが少しのきっかけになって更にお二人の絵が、世界に出て、世界から色々なメッセージをもらう事で、アーティストとしての可能性がもうひとつ、別な道が作れないかと考えています。
例えばお二人の絵が世界に出て、それが新たなきっかけになって、今までにないチャンスが出てくる可能性もあるのかなって、そういう意味での後ろ側の、ヘルプの役割としてのインターネットって存在できれば。
アーティストの為にも、何とかこれを軌道に乗せて、それを見た新たな第二第三のアーティストの方が、「私もやりたい」ってなれば、凄くいいきっかけになるかと思いますので。
TOMO
地方も全部は回れないですしね。やっぱり自分になんらかの関係がある地とか、依頼のある所でないとなかなか個展をする機会が無いから、なるべく告知をして見てもらうと いうのがいい関わり方だと思いますね。かおちゃんのようにグッズを作れればいいけど、きっかけになるような接点がないと。それが今後、良い関わ りというか、パートナーとしてできるかなと。
先輩アーティストとして
司会
今回コンペをするに当たって、実はデザイナーの卵というか、デザイナー志望の方々に対してもプロモーションを行っていて、その方々に対して、『これから自分でこういう(アートの)世界で食っていこうとしていくときに、何を気をつけたらいいのか』というアドバイスがあれば教えていただけますか。
絵で食べていくってすごい勇気がいることだし、どこかに属していくという生き方もあるじゃないですか。
TOMO
給料はちゃんと出ますからね。
かお
安定だね。
TOMO
僕の場合、一気に助走をつけて、遠くまでジャンプするとしたら、やっぱり助走の部分が大事で、
それは資金を貯める事や調べる事。
そこから後は、一気にジャンプしちゃうというか。
もう、ある程度、当面のお金だけ稼いだら、その世界に一気に飛び込んじゃう。
かお
稼いでから飛んだの? そこ、私と違うかも。
司会
もちろん、方法は一個じゃないんで。
TOMO
ちょうどきっかけになったのは、収入源になるようなのが二つ出てきたんで、これならいけると思って。
自分の場合、やっぱり、片手間でやっている間は、手に入るものも片手間分しかなかったんです。
完全に割り切って、作品を作ることが自分の仕事って意識すると、変わってくるんですよ。
やっぱり怖いことはいっぱいあるんですけど、それでも意地を張って。
やってかないとわからないことって本当にいっぱいあるから『やってみよう』は重要です。
かお
私の場合は、『勇気が持てるか持てないか。』が大きなポイントだね。
TOMO
うん、それと、一人じゃできないけど、やっぱりそれを周りで支えてくれる人がいるかいないかで全然違うと思います。
一人でやろうとしても、やっぱり限界が来ちゃう。かおちゃんもそうだけど、人と出会って、次の仕事につながったりとか、その人が誰かを紹介してくれたりとか、個展に来てくれたりとか。
そういうのが無いと、僕らは成り立たない。
やっぱりそういうところで、人ありきというか。いくら一人でやるっていったって限界がある。
描き続けていくにはやっぱり周りがあって、土台があって、ずっと制作し続けるのが一番大事だと思う。
司会
またこれで家族が出来て、考えることも変わりますよね。
TOMO
そこからさらに行くには、他の仕事に切り替えるのではなくて、絵の活動をどういう風に変えたら生活出来るのか。
出来る限り、絵をベースにしたいですね。
司会
今回応募する人ってのは、ある種インターネットから遠いとか、先ほど申し上げたような、今からデザイナーとして世に出て行く学生さんたちが多いと思いますが、あえて先輩アーティストとして、何か彼らに言葉をかける事があるとすれば。
かお
『不安君』と戦ってがんばってですね。私はいつも言っているんですけど。
司会
いまだに?
かお
いまだにですよ。グッズが出ているだけで、安定していて、スゴイと思われたりするんですけど、全然。
私もいつも肩に『不安君』が乗っているし。と言っていますね。
その環境でありつつも、やり続けられるかっていう。
TOMO
意外と、不安なのって、やってみるとそれが解消されるのが多いんですよ。一歩踏み出せるっていうのがすごく重要なことですよ。
あと、本当に、自分を信じるためにどれだけ努力できているか。いつも不安はついてまわるんですけど、結局、自分がちゃんとやってないと、その不安に呑み込まれちゃて。
ある程度自分がやることをちゃんとやっておけば、その不安に引っ張られても我慢できる。じゃないと、いつまで経っても「絵で生活」っていうのが夢で終わっちゃうというか、「できたらいいけど」っていうので止まっちゃう。
そこからさらに一歩進むには、自分が努力するっていうのが何でも重要だと思うんですよ。
「絵をたくさん描く」とか、目標を決めたらちゃんとそれをやり通すというか。
それが次の自信になるし、それでまた道が開けたりするんで。いつでもなんかね。いまだに不安はついてまわるんですけど。
かお
やることいっぱいやって、すごい成果が出たときは、一瞬(不安君が)後ろに隠れていてくれてる。いるんだけど、隠れてくれているときもある。
司会
安心するような事ってないんですか? 一生ついてまわる?
TOMO
一生多分。
かお
そうだよね。
TOMO
「毎週○○が休みで」とか無いし、祝日がいつとかも無いし。常に動いてないと、不安が追いついてきますね。
かお
あまり遊びすぎちゃうと『不安君』が目の前に来ちゃうからね。
司会
その不安は焦りとは違ったものですか?
TOMO
それが焦りにつながることもありますね。「来月どうするの?」とか焦りに結びつくことはあるんですけど、やっぱりそういうときこそ、やることやらないとダメだと思うんですよね。
かお
人によっては、「どうにか楽して上手くいかないかな」っていう『邪くん(よこしまくん)』てのがいるよ。
TOMO
器用な事ができる人は、いるんですけど、大半はそうはいかないと思うんですよね。
すごい運に恵まれてて、何やっても上手い方向に結びつく人はいるとは思うんですがね。
かお
でもその継続は難しいね。
TOMO
うん、それがラッキーパンチみたいな、たまにしか出なかったりとかするから、それを長く続けるとかするとやっぱり自分ができることやってることが、ちゃんと筋が通ってるというか、そこが重要なところだと思うんです。
司会
私はずっと何かに属してきていて、そんなに毎日不安を抱えながら過ごす事は耐えられないというか、精神的にどう保つんですか?
かお
好きな事だから。中途半端な好きだと多分(できない)
TOMO
自分が会社に所属していたときって、「何か違うな」と思いながら仕事をしていました。それに耐えられなかったんですよね。
「本当は、絵でやりたいんだけど…」を、「じゃあやってみればいいじゃん」へ次第に移行。もう、そしたら走るしかない。
それで今まできましたね.
かお
会社員やってたんだ。
TOMO
けっこう色々やってて。5~6年前いろんな仕事をやってて。絶対ドジを踏んじゃって。会議してる途中に居眠りしてイスから落っこちちゃって。
かお
それはダメだわ。
TOMO
笑ってごまかしたけど(笑)
Jimdoで世界に発信
司会
インターネットもそうだし、絵もそうだし音楽もそうなんですけど、別に物理的国境って無いものじゃないですか。
そういうものに対してどう考えられてます?
やっぱりより多くの世界の人にいっぱい知ってもらいたいって思うか、いやいや日本だけでとりあえずはっていう。
かお
いや、もちろん外に出たいね。
TOMO
どういう受け入れられ方をするのかすごい気になりますよね。どの国で評判がイマイチで、どの国で評判が良いのか。
かお
ミュージシャンでも、外国人でも、日本ではすごい売れてるのに、向こうではそうでもなかったりとか。
TOMO
全然違うし、きっと、捉え方もすごい違うだろうし。
田舎の風景を描いて、実家の長野県の風景を描いていても、外人が見て、「あ、僕の故郷のあそこに似てる」とか。
そういうので、すごい興味はありますね。どんな反応をするのか。
司会
違うでしょうね。今回のスペシャルテンプレートは、日本だけでもできるし、世界に出せますがどうしましょうか?
かお
世界がいいね。
TOMO
うん、間口が広がるし。
司会
少なくともお二人はドイツでは好評でした。
TOMO&かお
本当ですか!?
(2009年3月18日・KDDIウェブコミュニケーションズにて)
アーティストプロフィール
TOMOYAARTS (鶴田智也)
長野県出身、4月15日生まれ。
東京デザイナー学院を卒業後、デザイン会社、日本料理、人力車、書店などを経験しつつ絵を描き続ける。デパートなどで版画や額を販売する『アートプリント ジャパン』やサーフショップ『ブルーアートドライブ』との出会いから絵のみの生活に切り替わり、現在は百貨店での原画展、オリジナルの絵本、自主企画のイ ベントなどで活躍している。
ホームページ:http://www.tomoyaarts.com/
かおかおパンダ
北海道札幌市生まれ。
女子美術大学造形計画専攻卒業。大きな壁画を得意とし、近年多数開催されている個展も話題を集める。また、子ども達との壁画制作「かおかおパンダと空の下ペインティング」(鎌倉市海浜公園水泳プール)等イベント活動も多数。
その他、絵本「虹になったしずく」出版など、アーティストとして幅広く活動。
ホームページ:http://www.kaokaopanda.com/